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●SRCシナリオ「雨に濡れた蜃気楼」最終話まで

 ――主人公、橘歩美は雷を操る超能力者であり、なぜか雨の日は魔物に襲われしまう。
 
 物語の骨子はここにある。主人公は昔から続くその異常な事態を、しかし今や惰性的に
受け止めてしまっており、それから解放されることを、半ば諦めてしまっている。異常も
慣れれば日常へと堕落する。主人公は雨の日の魔物に心を煩わされたりはせず、専ら自分
の内面世界に没入して、他者との距離を探っている。スタンスを表明することはとても大
切だ。シナリオ冒頭から、プレイヤーはこの作品がとても感傷的な視点を主軸とした物語
であると認識してくれるのだから。加えて安定版でこのような画像演出が可能なのかとも
驚いた。意欲的な演出技法の導入は、すなわちシナリオに対する作者の思い入れの度合い
を感じさせてくれる。いわゆるノベル系のシナリオには拒否反応を示す向きもおられるだ
ろうが、過去の作品の屍の上を踏まえてきた最近の作品は秀逸なものが多い、筈である。
画像方面の進化と文章の見せかたは、物語の演出という点で表裏を成し、SRCを更なる
深みへと誘ってくれるものであると私は考えている。無論、そればかりに拘泥して基本が
おろそかになってはいけないのだが。ともあれこの物語は四話からなる短編で、ゆえに作
者は主人公以外をはじめから切り捨てている。橘歩美のための物語は、横道に逸れること
なく、橘歩美の物語として完結を迎える。彼女を核とした人間関係こそさらりと描写され
るものの、それはあくまで物語を構成するうえでの必要最低限であり、力点が移行するこ
とはない。この手法がために、戦闘パートにおける敵方の描写が弱くなってしまうのは、
痛し痒しといったところか。最後に控える敵も、能力面はさておきキャラクターとして自
分の足で立っておらず、脅威と映らぬままやっつけてしまった感がある。個人的な意見と
しては、阿片を先触れとする一連の要素は、この物語には不要だったのではないかと思う。
そこの部分だけ、「雨に濡れた蜃気楼」という物語のなかで、微妙な遊離を起こしてはい
ないだろうか。一話、二話と期待して坂道を登ってきたのに、登りきったら知らない場所
に出てしまったような、そんな落胆をおぼえた。等と書いてしまうのも、この作品が一定
の水準を満たしているからだ。
 内省的な少女はとても萌えるし、能力者としても面白いキャラであるのは間違いない。
できれば今回だけに留まらず、次回作以降でゲストとしての出演があればいいなあと思っ
たりもします。惜しむらくは、ユニットアイコンの充実に努めてほしかった。
 (03/09/04)